名水百選に選ばれた豊富な水と肥沃な土が育むおいしいお米

和氣ふぁーむ
栃木県の中央からやや北部に位置する塩谷郡塩谷町。地域の象徴である高原山の中腹にある「尚仁沢湧水(しょうじんざわゆうすい)」から注ぐ豊富な水を利用し、お客様に寄り添い、お客様に求められるおいしいお米づくりに励んでいます。
和氣ふぁーむさんの商品一覧
お米づくりは子どもを育てるようなもの。その成長がやりがいに
『株式会社和氣ふぁーむ』生産者・佐藤洋右さん
130ヘクタールもの広大な圃場を有する「株式会社和氣ふぁーむ」。栃木県の中央からやや北部に位置する塩谷郡塩谷町でお米や大豆、麦などを育てています。圃場を管理するのはわずか10人足らず。人手不足に悩みながらも、「食味」と「健康」を信念とした農業に取り組んでいます。
地域の象徴である高原山の中腹にある「尚仁沢湧水(しょうじんざわゆうすい)」から注ぐ豊富な水は、「食味」にこだわる和氣ファームにとってなくてはならないもの。さらに、おいしく安全なお米を育てるためのこだわりは、土づくりや特別栽培米などにも広がります。
ソラミドごはんでも取り扱っている『ゆうだい21』、『ミルキークイーン』、『コシヒカリ(特別栽培米)・コシヒカリ白米&玄米(農薬不使用)』、『いのちの壱』もそれらのこだわりから栽培されたお米です。
2人の兄とともに、圃場を管理する佐藤洋右さんに、お米づくりにかける熱い思いをお聞きしました。
130ヘクタールの広大な圃場で育てる、大賞受賞のコシヒカリ

「新米が穫れたら、どのお米も必ず自分で炊いて食べてみます。もちろんお米の出来を確認するという目的もありますが、なによりもご飯が好きなので。しかも炊くときにはメスティンを使うことが多いですね。直火で炊くことによって、お米のふっくら感と粘りをより強く感じるんです」
笑顔でそう話すのは、栃木県塩谷郡塩谷町にある「株式会社和氣ふぁーむ」でお米づくりに取り組む佐藤洋右さん。キャンプ好きを自称する佐藤さんは、自宅でもメスティンを使いお米を炊くそうです。
和氣ふぁーむは、2008年に佐藤さんの父親が立ち上げた農業法人。3ヘクタールからスタートし、現在は130ヘクタールにまで圃場を広げています。1ヘクタールで野球場が1つ作れるほどの面積だということを考えると、いかに広大かということがわかります。
現在、主に栽培しているのは、2018年に「とちぎ米-1グランプリ コシヒカリ部門」で大賞を受賞したコシヒカリを中心としたお米、加えて、大豆や麦、蕎麦など。佐藤さんは2人の兄とともに和氣ふぁーむの要として農業に携わっています。
「圃場を広げた理由としては、法人としての経営を成り立たせること。それから、農業を続けていくのが難しくなった個人の農家さんから田んぼを引き継いだ、というのも大きな理由です」
わずか16年の間に、その規模は急拡大。農業を継続できない農家が急速に増えていったということでもあります。ただ、「農家から引き継いだ田んぼでお米を育てるには、お互いの信頼関係が重要」と佐藤さん。というのも、小作契約を交わした農家には、収穫したお米が届けられます。もちろんその品質には高いレベルが求められるとか。
「皆さんもともとお米づくりのプロですから、当然、妥協はできませんね。私たちとしても、それが原動力になっています。ただ、この広い圃場を維持するにはもっと人手が必要です。現在は、私と兄2人、従業員や技能実習生を含めても10人足らずで、とても充分とは言えない状況ですね」
地域の農業を衰退させないためにも、後継者不足に悩む農家から圃場を譲り受けるのはやむを得ないこと。同時に、維持することの難しさは否めないようです。
名水百選の「水」に感謝し、こだわり続ける和氣ふぁーむの農法
しかし、和氣ふぁーむの信念でもある「食味」と「健康」を追求するため、「お米づくりのこだわりが揺らぐことはない」と佐藤さんは話します。中でも佐藤さんがもっとも力を注いでいるのが水の管理。毎朝毎夕欠かさずに、すべての田んぼを見てまわるそうです。
「お米の栽培には水が欠かせません。ただ、やみくもに水を入れ続ければ良いというわけでもないんです。稲の成長を観察しながら、必要な水位を見極めています。圃場が広いので、作業の時間もかなりになりますが、それもおいしいお米をつくるため。すでに毎日の習慣にもなっていますから、行かないと気が済まないんですよ」
和氣ふぁーむがある塩谷町の象徴といえば、日光国立公園の一部である高原山。その中腹に位置する「尚仁沢湧水」は名水百選にも選ばれています。清らかで豊富な水は、和氣ふぁーむにとって、自然からの最大の恵み。香り、味、粘りなど、お米の「食味」を高める大きな要素となっています。
同時に、「土づくり」にもこだわります。土が本来持っている自然のエネルギーを引き出すため、化学肥料をできるだけ抑え、有機肥料を与えることにより微生物の働きを活性化させ、栄養豊富な肥えた土に育てていきます。「化学肥料に頼りすぎると、土がそれに頼ってしまい、本来の力を失うことで痩せ細っていくんです」と佐藤さん。
「土づくりには、大豆の栽培も一役買ってます。大豆を収穫した後、畑に残る茎や鞘を田んぼの土にすき込むと、良い肥料になるんです。それらが持つ窒素成分が良い影響を与えて、おいしいお米ができるだけでなく、収穫量も増えるんです。作物同士が良い影響を与え合っているようですね」

さらに、「健康」をめざしたお米づくりは、特別栽培米にもつながります。特別栽培米とは、慣行農業で使用される節減対象農薬の使用回数を50%以下に減らし、化学肥料の窒素成分量を50%以下に抑えて栽培したお米。和氣ふぁーむの半分近くがこの特別栽培米です。現在ではお客様から要望もあり、無農薬栽培にも取り組んでいるそうです。
「もちろん、この広い圃場を管理していくには難しさもあります。ただ、お客様に寄り添い、お客様が喜ぶおいしいお米を提供することが、私たちの役割だと思っているんです。難しいからできません、とは言えないですからね」
その思いからさらに取り組んでいるのが、お米の低温貯蔵。大規模な貯蔵庫を設備し、収穫から時間が経っても、できる限り新米に近いおいしさを味わってほしいという願いの現れです。
人手不足に悩みながらも、日々感じるお米づくりのやりがいと楽しさ
そもそも、大学卒業後は飲食業界に身を置いていたという佐藤さん。どのような経緯で和氣ふぁーむの一員として農業に携わるようになったのでしょうか。
「飲食業をやっていた頃、父や、すでに農業を手伝っていた兄たちと話す機会があって、そのときに飲食の経験を和氣ふぁーむで活かすことができないか、という話になったんです。自分で育てたお米を料理してお客様に食べていただく。それをイメージしたとき、純粋にやってみたいと思ったんです」
ちょうど当時は、農業の6次産業化による「農家レストラン」が注目されはじめた頃。自らの経験を活かす新たな場と捉え、佐藤さんは就農を決意します。
「収穫したもち米をお餅に加工したり、イベントで肉巻きおにぎりを提供したりと、少しずつその機会を増やしてはいます。ただ正直なところ、できるのは冬の農閑期だけ。それ以外の時期は農業の方が忙しくて、なかなか取り組めていませんね」

人手不足は、新たなチャレンジの大きな障壁にもなっているようです。
「就農する人よりも、農業を辞める人の方が圧倒的に多いのが実情です。その状況を変えるには、私たちが、お米づくりのやりがいや楽しさを伝えることも必要だと感じています。実際に、稲が育っていく様子を毎日目にすると、だんだんと愛おしくなるんです。手を掛ければ掛けただけ、成長として現れる。植物は本当に素直だと感じます。子どもを育てているような、そんな感覚ですね」
お米づくりに携わるからこそ目にすることができる自然の営み。そこから感じる「育てる」ことの興味深さ。自らの思いを伝えることが、人手不足という大きな課題を解決する糸口かもしれないと佐藤さんは話します。
「スマート農業への投資も必要だと感じています。効率化を図ることで『農業は思っていたよりも大変ではない』と感じる人も増えるはずです。和氣ふぁーむでも防除対策用ドローンや除草剤散布用無人ボート、農薬を使わない圃場にはアイガモロボを取り入れていますが、徐々にでも、農業への入り口を入りやすいものにすることが大切だと実感しています」


農業の興味深さを伝えていくことが、「人」を育てるきっかけに
農業界が抱える課題は、同時に和氣ふぁーむの課題でもあるようです。「ですが」と佐藤さんは続けます。
「お客様からの声が励みになっているんです。『和氣ふぁーむのお米じゃないとだめ』と言われると、本当に嬉しいですし、やる気が湧いてきます」

有名ホテルやレストランでも食べられている和氣ふぁーむのお米。そこで口にしたお客様が、和氣ふぁーむのお米をわざわざ買い求めることもあるそう。飲食業界にいた佐藤さんだからこそ、それがどんな意味を持つのか、よくわかるのかもしれません。
「お米づくりの未来は、人を育てることから始まると思うんです。技術があるのなら、それを受け継いでいく人が必要ですよね。お米をつくっている私にできることは、今感じていることを伝えていくことだと思っています」
佐藤さんにとって、お米は「子ども」のようなもの。ときには思い通りにいかないことがあっても、その存在を「かわいい」と笑顔で話します。愛情たっぷりに育ったお米は、きっとどこかで「おいしい」の笑顔を引き出しているはずです。
取材/執筆:福島和加子
編集:佐藤純平
写真:株式会社和氣ふぁーむ