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国立大学で育まれた努力の結晶「ゆうだい21」─物語の先にあった、誰もが認めるおいしさ─(品種の特徴・開発秘話)

    宇都宮大学の農場で、研究者がふと目に留めた一株の稲。その小さな違和感から誕生したのが、国立大学初のお米「ゆうだい21」です。発見から品種登録までに20年。さらにその後も、決して平坦ではない道のりを経て、いまやコシヒカリを上回るおいしさとして全国から高い評価を得ています。

    今回は、宇都宮大学の櫻谷満一特任准教授と、「ゆうだい21」のディレクター・森島規仁さんに、その誕生から現在に至るまでの軌跡や支え続けてきた人々の思い、そして未来への展望をお聞きしました。

    「ゆうだい21」についてお話を聞かせてくれた人

    櫻谷満一特任准教授

    1990年に農林水産省入省後、国の研究行政や大学、研究機関で農業・食品分野の研究マネジメントや産学官連携に携わる。2025年9月に宇都宮大学に着任し、「ゆうだい21」普及を担うプロジェクトチームの総括を務める。

    森島規仁さん

    宇都宮大学農学部の学生時代から、「ゆうだい21」を発見した前田忠信名教授のもとで研究に携わる。その後、大学職員として種子の生産や生産者向けの栽培講習を担当するディレクターとして活動。また、自身も農家として「ゆうだい21」を栽培する。

    農場の「一株」を見逃さなかった観察眼

    「ゆうだい21」の出発点は、宇都宮大学内にある附属農場で行われていた、収穫量の高い品種の栽培研究を進めるなか、1990年に偶然発見された一株がその始まりです。

    そもそも宇都宮大学は教育研究機関であり、水稲品種の栽培試験比較を実施するなか、当時研究を進めていた前田忠信名誉教授(2009年退官)が目を留めたのが、周囲とは明らかに様子の異なる一株でした。草丈が高く、穂も大きいその姿は、日々丹念に観察を続けてきた前田教授にとって見過ごせないものだったといいます。

    森島さん

    前田教授はそのとき、『これはすごい稲になるぞ』と感じたそうです。ただ当時、どのような稲が交雑して生まれたのかは分からず、長い間『親不明』とされていました。20年にわたり、この稲を新たな品種として育て上げるという前田教授の挑戦が始まったんです。

    日本の稲の品種は、国や県などの公的研究機関が作るのが一般的。大学が、育成やその後の普及までを単独で行うのは、極めて難しい道でした。それでも、前田教授が20年という歳月をかけて新たな品種を作ろうと走り続けたのは、発見した稲の可能性を信じていたからこそ。前田教授が長年培ってきた「観察眼」に裏付けされた確信があったといえます。

    こうして農場の片隅で芽吹いた一株は、まだ名前はないものの、可能性への期待とともに、長い育成の道を歩み始めます。

    「奇跡」ではなく、20年の「努力」によって育まれたお米

    発見が偶然だったとしても、品種として完成させる過程は、努力の積み重ね以外の何ものでもなかったようです。以後、前田教授は、大学の農場で一年に一度の栽培試験を繰り返し、データを積み重ねていきます。

    その過程で1993年に起きた「平成の大冷害」。日本の稲作が大きく揺らぐなか、候補として研究が進んでいた稲のいくつかが淘汰されたこともあり、次第に確かな系統へと絞られていきます。さらにそこから選抜が進み、残った稲が暑さに強い特性を持ち、加えておいしさの面でもコシヒカリよりも優れていると判明。徐々に前田教授の期待も高まっていったようです。

    そして2000年、最終選抜された稲の中から、ひときわ穂が大きく背の高い稲が見つかります。この稲を育て続けたところ、味も形も優れていることが分かり、2007年に品種登録を出願。2010年に「ゆうだい21」として正式に品種登録され、ついに国立大学では初となる新たなお米が誕生しました。

    名前の由来は、宇都宮大学が地元で「うだい」と呼ばれていたことと、稲がコシヒカリよりも大きく「雄大」であること。さらに、21世紀を代表するお米になってほしいという願いも込められています。

    とはいえ、品種登録以降、全国各地の生産者が栽培を行ってみたものの、「ゆうだい21」が持つ特性ゆえ、新たな壁が待ち受けていたと森島さんは話します。

    森島さん

    ゆうだい21は、肥料や気温への反応がとても強い品種なんです。人で言えば、食べた分だけすぐ太ってしまうようなタイプ。追肥をすると一気に成長し、その分倒れやすくなる傾向があります。作りやすい稲を求める生産者にとっては扱いが難しく、『こんなはずじゃなかった』というクレームも寄せられました。

    櫻谷先生

    大学が単独で、栽培技術の指導をどこまで担えるのかという課題もありました。先行事例がなく、学ぶべきモデルも存在しないなかで広めていくのはかなり難しかったといえます。

    「ゆうだい21」は、特性をきちんと理解した上で栽培することが不可欠。しかし、全国へと普及させる過程で、気候など地域ごとの栽培条件の違いが表面化し、定着には時間を要しました。それでも、その味に可能性を見出し、日々研鑽を続ける生産者の存在もまた、現在まで「ゆうだい21」を支えています。

    さらに、注目を集める転機となったのが、コロナ禍です。それ以前は多品種の登場に押され存在感が薄れつつありましたが、米の在庫過剰が社会問題となり、“売れるお米”や“おいしいお米”という高品質米への関心が一気に高まったことで、味に強みを持つ「ゆうだい21」が見直されたのです。国立大学という立場上、大規模な広告プロモーションは行えなかったものの、コンクールでの評価や生産者自身の発信が徐々に広がり、流通量の少なさが、結果的に「希少性」という価値を生み出しました。その一歩ずつの前進が、「ゆうだい21」のブランド基盤を形作っています。

    櫻谷先生

    そこには、2010年に品種登録されてからこれまで、種籾の生産を大学の附属農場で続けてきた功績もあります。手放すことなく地道にやってきた結果だと感じます。

    森島さん

    20年かけて大学で品種開発したというストーリー性も、評価の一因だと思います。当時、国や県でなく大学が開発したお米というのは唯一無二。『コシヒカリを上回るほどおいしい』というキャッチフレーズとともに普及させたことも、功を奏したようです。

    コンクールでも最高賞を受賞!コシヒカリを上回るおいしさとは

    数々の壁を越えてきた「ゆうだい21」を最終的に支えたのは、やはり味。コシヒカリ一強ともいえるお米市場でも、そのおいしさはかなりのインパクトを持っています。それを証明しているのが、日本最大級のコンペティションである「米・食味分析鑑定コンクール:国際大会」で最高賞である金賞を多数受賞するという実績。おいしさを数値で示す「味度値」が非常に高く、審査員が実際に食べて評価する官能試験でも高得点を得ています。出品件数はコシヒカリが圧倒的に多いものの、「ゆうだい21」の受賞率はそれを凌いでいるのです。

    森島さん

    おいしさの理由の一つがもちもちとした食感です。粒が長いため、炊くとしっかりとした粒感があり、噛めば噛むほど甘みが広がります。
    さらに、冷めると味の輪郭がはっきりするのもゆうだい21ならではですね。『冷めてからの方がおいしい』と評価する方も少なくありません。おにぎりやお弁当にも最適です。

    加えて、科学的には検証されていないものの、新米の時期よりも年を越してからの方が甘みを感じるという声も多いとか。収穫直後よりも水分量が落ち着き、味わいが安定することが理由として考えられるようです。

    櫻谷先生

    炊き立てのおいしさはもちろんですが、特に和食との相性は抜群ですね。お味噌汁とたくあんのシンプルな組み合わせでも満足感があります。

    さらに近年では、玄米にも注目が集まっています。その甘みは白米を凌ぐ、との評価も聞こえてきます。

    森島さん

    私の娘たちも、ゆうだい21の玄米が大のお気に入り。わが家では、白米よりも玄米で炊くことの方が多いですね。私はもともと玄米がそれほど得意ではなかったんですが、このお米の玄米は甘みが強く、印象が変わりました。

    知る人ぞ知るお米から、誰もが知るお米へ

    ゆうだい21は現在、北海道から沖縄まで、すべての都道府県で栽培されています。ただ、その栽培規模は地域や生産者ごとに差があり、まだまだ流通量としては多くありません。それでも「コシヒカリを上回るおいしさ」を武器に、栽培希望者は年々増え続けています。

    その普及を支えているのが、生産者同士のつながりです。宇都宮大学が年に一度開催する「ゆうだい21サミット」には全国から生産者が集い、自らの経験や栽培の工夫を共有。さらに持ち寄ったお米の味をコンクールで競います。この場が、単なる技術交流に留まらず、生産者同士の横の結びつきを強め、栽培方法の向上につながる重要な機会になっているのです。

    森島さん

    生産者に継続して栽培してもらうには、収穫量のアップも重要。その意味で、この生産者コミュニティの存在は大きいんです。大学としても、栽培マニュアルの提供など、できる限り、生産者へのアシストを続けています。

    現在の販売は、道の駅や町のお米屋さんなどが中心。大手スーパーなどで販売するためには、生産量の増加や流通を促す仕組み作りが欠かせません。ですが、まずは小ロットからでも消費者においしいと実感してもらうことが大切、と櫻谷先生は説明します。

    「ゆうだい21」の可能性を信じてやまない、森島さんと櫻谷先生。最後にお二人が思い描く未来像をお聞きしました。

    櫻谷先生

    ゆうだい21のような個性的な品種は、価値を理解してくれるお店や、おいしいと共感してくれる消費者を、生産者とつないでいくことが大切です。そうすれば自ずと、大学発のお米という付加価値がゆうだい21の普及を後押ししてくれるはずだと信じています。
    まずは、ゆうだい21を実際に食べていただきたい。知る人ぞ知るお米から、みんなが知っているお米へと成長させることが、私の願いです。

    森島さん

    1990年の発見からこれまで、本当に多くの紆余曲折がありました。学生時代から前田教授のもとで関わってきた身としては、前田教授が生みの親なら、自分は育ての親だと思っています(笑)。だからこそ、今、多くの方に評価していただいていることが何より嬉しい。これからも一人でも多くの方に、このお米を届けていきたいですね。

    「ゆうだい21」の普及に力を注ぐ櫻谷先生、森島さんに取材してみて

    長い年月を経て、確かな評価を得ている「ゆうだい21」。その歩みを導いたのは、可能性を信じて観察と研究を積み重ねた前田教授の熱意と、ともに歩み続けた学生や生産者の諦めない姿勢だったと感じます。

    農場の一株から始まった物語。その背景に想いを馳せながら味わう「ゆうだい21」は、格別のおいしさに違いありません。

    取材・執筆: 福島和加子
    写真提供: 宇都宮大学

    ソラミドごはんでお取扱中の「ゆうだい21」

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