漬物のプロに聞いてみた!ごはんと漬物の「最強の関係」とは

風味豊かで、噛むほどに奥が深い。
ごはんのお供といえば、やっぱり漬物。日常の身近なおかずとして昔から親しまれ続けている漬物は、発酵の力でお米の甘みを引き立て、どんな日にもほっとするおいしさを届けてくれる存在です。
そこで、ソラミドごはんは、“ごはんを支える存在”としての漬物に注目。
創業のルーツを農業に持つ老舗・秋本食品さんにお話を伺い、漬物の歴史や、ごはんの味わいを引き立ててくれるおいしさの理由、そして暮らしの中でうれしい変化をもたらす発酵の力について教えてもらいました。
お話を伺った人
秋本食品株式会社
べじにゃぶる部 広報担当(仮)
だいにゃんさん
秋本食品は、神奈川県藤沢市で創業し90年以上の歴史を持つ老舗の漬物メーカーです。時代の食文化に合わせて浅漬やキムチなど多彩な商品を展開。乳酸発酵による“腸活”への注目や、野菜摂取を促す取り組みなどを通じて、日々の食卓に寄り添う漬物づくりを続けています。
会社ホームページ:
https://www.akimoto.co.jp/
Instagram:
https://www.instagram.com/akimoto_foods/

農家の想いから生まれた、一本のたくあん

──秋本食品さんは藤沢で創業されたそうですね。どんなきっかけで始まったんですか?
──よくニュースでも「野菜の豊作が逆に悩みになる」って聞きます。
そこで秋本家が「それなら、うちで引き取って漬けてみよう!」と立ち上がって、余っていた大根を仕入れて漬けることにしたんです。
でも、最初はなかなかうまく漬けられなかったみたいで……。そこで、当時たくあんの名産地だった東京・練馬まで、大八車(リヤカー)に大根を積んで修行に行ったそうなんです。
──藤沢から練馬まで、すごい距離ですね……!
遠い道のりだったけど、その熱い気持ちが実って、地元に戻ってからはどんどんおいしいたくあんが漬けられるようになったんです。
そしてついに、「内閣総理大臣賞」をいただけるほどのたくあんが作れるようになったんです! すごいことなんです〜。
──農家を助けたい、という思いから始まったんですね。
秋本食品は、もともと農家さんなんです。だから、お野菜を育てる大変さも、できたときのうれしさも、よ〜くわかっているんです。
だからこそ、仕入れさせていただく農家さんには、いつも「ありがとう」の気持ちでいっぱいなんです!
そして、そのお野菜を食べて「おいしい!」って言ってくださるお客さまの笑顔にも、いつも感謝を忘れないようにしているんです。
──農家への感謝と、食べる人への感謝。どちらも秋本食品さんの原点なんですね。
そうなんです。お野菜に一生懸命向き合う。そして、誠実に漬物を作る。その姿勢は創業当時から変わっていないんです。
──人と人の気持ちをつなぐ漬物の原点が、そこにある気がします。
時代とともに変わる、漬物のかたち

──創業当時はたくあん作りから始まったそうですが、その後、どのように歩みを進めてこられたのでしょうか?
時代の流れといっしょに、「浅漬け」や「キムチ」など、もっと身近に楽しめる漬物が主流になっていったんです。
昔は保存が目的だったから、しょっぱめの漬物が多かったんです。でも今は、そのまま食べておいしい浅漬けが人気なんです〜。
食卓での役割も、「保存食」から「副菜」へと、少しずつかわってきたんです。
──たしかに、最近はシャキッとした浅漬けをそのまま楽しむ方が増えていますよね。
実は、浅漬けが登場したのは昭和40年代ごろ。漬物のなが〜い歴史の中では、けっこう最近のお話なんです。それまでは、長く保存できるように漬けるのが当たり前。でも、「しゃきしゃきの食感も楽しみたい!」という声がふえてきて、新しいスタイルの“浅漬け”が生まれたんです。
──思っていたよりも新しい文化なんですね。
そうなんです。そして、さらに変化があったのが、2002年の日韓ワールドカップのころ。韓国の文化が広がって、キムチがぐっと身近な存在になりました。
いまでは、漬物の中でもキムチがいちばん人気なんです。

──時代の変化とともに、漬物も姿を変えてきたんですね。
形が変わっても、お野菜をおいしく保存して食べるという本質は同じ。漬物は、時代に合わせて進化を続けてきた日本の知恵だと思っています。
──形を変えながらも、受け継がれてきた知恵ですね。
なぜ漬物はごはんに合うの?

──漬物といえば、やっぱり白いごはんが欠かせませんよね。なぜこんなに相性がいいんでしょうか?
だいにゃんたちも、漬物は和食に欠かせない存在だと思っています。
ユネスコの無形文化遺産に「和食」が登録されたのはご存じですか?
その特徴のひとつに、多様で新鮮な食材と、その持ち味を生かすという考え方があるんです。まさに、漬物はその代表と言えるんです。
──素材そのものを引き立てる料理、ということですね。
そうなんです。そして、科学的にもごはんと漬物が相性ぴったりな理由があるんですよ。漬物のしょっぱさが、ごはんのやさしい甘みを引き立ててくれるんです。
──スイカに塩をかけると甘く感じる、あの原理ですか!
まさにそうなんです。甘みと塩味には、お互いを引き立て合うという関係があるんです。だから、漬物とごはんをいっしょに食べると、お米の自然な甘みがより感じられるんです。
──なるほど。理屈を聞くと、ますますおいしく感じますね。
それに、食感の相性もとってもいいんです。ふっくらしたお米に、シャキッとしたお野菜。かむほどにおいしさが広がっていきます。香りや音もふくめて、五感で楽しめる組み合わせなんです。
──まさに、日本人の“ごはんのお供”の原点ですね。
漬物の発酵がもたらす力

──漬物といえば、発酵食品ですよね。発酵の力ってどんな作用があるのでしょうか?
漬物の発酵には、主に乳酸菌が関わっているんです。味噌やしょうゆでは酵母、チーズではカビの力を使いますが、漬物の場合は“植物性の乳酸菌”ががんばってくれているんです。
──植物性乳酸菌って、ヨーグルトなどに使われる動物性乳酸菌とどう違うんですか?
植物性の乳酸菌は、塩分や温度の変化にも強くて、過酷な環境でも生き抜く力があるんです。そのおかげで、腸まで届きやすいとも言われています。つまり、体の中でもしっかり働いてくれるんです。
──なるほど。おいしいだけじゃなくて、ちゃんと体にもいいんですね。
そうなんです。発酵によって、うまみや酸味がふえて味に深みが出るんです。それだけでなく、腸内環境をととのえたり、免疫力をサポートしたりと、健康の面でもうれしい効果があるんですよ。
──“おいしい”と“からだにやさしい”が両立してるって、理想的です。
そう思うんです!昔の人たちが自然に漬物を食べ続けてきたのは、ただ保存のためじゃなくて、からだがほんとうに求めていた食べものだったからかもしれません。
毎日の食卓に漬物を取り入れるヒント

──発酵の力って、すごいですね。では、普段の食卓で漬物をもっと楽しむには、どんな工夫ができますか?
まずは、シンプルにごはんのお供として味わってほしいんです。漬物って、それだけで完成されたおかずなんですよ。無理に手を加えなくても、じゅうぶんおいしいんです。
──たしかに、ちょっとあるだけでごはんが進みますもんね。
そうなんです。じつは、漬物のいいところは“おやさいをたっぷり摂れる”ことでもあるんですよ。
生のままだとたくさん食べにくいお野菜も、漬けることでかさが減るから、自然とたくさん食べられるんです。忙しい日でもむりなくお野菜を取り入れられる。それも、漬物のうれしい魅力なんです。
──野菜を手軽に食べられるなんてうれしいですね。
そうなんです。ちょっとアレンジするなら、お鍋や炒めものに入れるのもおすすめです。漬物はすでに味が入っているので、調味料を減らせて時短にもなるんですよ。
──漬物って、思っていたよりずっと万能なんですね。食事に取り入れたくなってきました!
これからの漬物、これからの食卓

────これから、どんな形で漬物の魅力を伝えていきたいと考えていますか?
いま、漬物を買ってくださるのは、50代以上の方が多いんです。でも、ほんとうはもっと若い世代のみなさんにも、気軽に楽しんでもらいたいと思っているんです。
SNSでの発信や、だいにゃんたちキャラクターの企画を通して、「漬物って、意外とおもしろい!」って感じてもらえたらうれしいです。
──たしかに、ちょっと添えるだけで食卓が明るくなりますもんね。
そうなんです。漬物って、特別なごちそうじゃなくて、毎日の暮らしの味なんです。これからも、みんなの食卓にそっと寄り添う存在でいたいと思っています。
お話を聞いて感じたのは、漬物は決して古い食べものではなく、 時代に合わせて進化を続ける生きた文化だということ。 温かいごはんの隣に、そっと寄り添う漬物。それは、これからも私たちの食卓をやさしく支えてくれる存在です。
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