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おいしいごはんを炊くコツを知ろう〜日本炊飯協会に教わる炊飯の科学〜

    ごはんをよりおいしく食べようと思うと、忘れてはならないのは炊き方です。
    どんなにおいしいお米でも炊き方がよくなければ、その分おいしさも減ってしまいかねません。

    そもそもお米はどういう仕組みで炊けていて、どう炊けばおいしいのでしょうか?

    そこで訪ねたのが日本炊飯協会です。

    こちらでは「ごはんソムリエ」や「炊飯HACCAP」の認定事業を行っています。
    事務局長の三橋さんに科学の視点をもとに、炊飯器でおいしいごはんを炊くコツを伺いました。

    公益社団法人日本炊飯協会

    中食や外食産業向けに米飯を提供する事業者が、業界の衛生管理を目的とした業界団体として設立。安心安全でおいしいごはんの提供のための活動を行っている。2025年4月現在は正会員63社、賛助会員28社が加盟している。
    主な事業として「炊飯HACCP認定基準」に沿った炊飯HACCPの認定、炊飯技術やごはんの栄養学など、幅広い知識を有する専門家「ごはんソムリエ」の認定事業などを行っている。ごはんソムリエ認定は2007年から開始し、認定登録者は2000名を超える。
    https://www.rice-cook.com/

    聞き手: ソラミドごはんくん

    ごはんが大好き!
    ちょっぴりヒツジに似たごはんの妖精。好奇心旺盛で、ごはんのことなら何でも知りたい!聞きたい!見てみたい!と思っている。

    科学的な視点で炊飯を知ればばおいしいごはんが炊ける

    ごはんくん

    こんにちは。今回は炊飯のことを知り尽くしている日本炊飯協会さんに、おいしいごはんはどうやったら炊けるのか、ぜひコツを教えていただきたいと思います。

    三橋さん

    我々は事業のひとつとしてごはんソムリエの認定事業を行っていますが、その立ち上げ前から「炊飯の科学」と題して講座をやっていました。我々がごはんソムリエを目指す人向けに使っているテキストなどは、査読を受けた論文などを元にしているので、科学的に証明されている内容です。事炊飯の科学を知ってもらうことで、ご家庭の炊飯器でもおいしく炊けると思います。

    ごはんくん

    炊飯の科学的なエビデンス、とても気になります。ぜひよろしくお願いします!

    三橋さん

    早速だけど、質問です。「炊飯」とはなんでしょうか?

    ごはんくん

    ええと、文字のままならお米を炊くということですよね?

    三橋さん

    ごはんソムリエのテキストでは、「“炊飯”は米に水を加えて過熱し、米飯にする調理」としています。調理工程は単純にいえばたったの2つ。炊く前に米に水を吸わせ、熱を加えるだけです。でも科学的に見ると気温や水温、気圧、また米によっても最適な条件が異なる、非常に繊細で難しい調理でもあるんです。

    ごはんくん

    炊飯器だとスイッチを押すだけで炊けてしまいます。でももっといろんなことに気を遣うと、もっとおいしくなるんでしょうか。

    三橋さん

    そうなんです。日本で電気式の炊飯器が誕生したのは1955年。以来、炊飯器は進化して今はIHといって電磁誘導加熱で内釜を熱して調理しますが、誰でもスイッチひとつでごはんが炊けます。でもさらにおいしくしたいなら5分の手間で変わってくるんですよ。順を追って話しましょう。

    炊飯の科学① 浸漬時間と炊飯モードの関係

    三橋さん

    炊飯には2つの工程があるといったけど、その前にやることがあります。米を洗い、水に浸すことです。

    まず米を洗うことについてですが、精米技術が今ほど進んでいなかった頃は米を研ぐといって、米同士をこすり合わせるように激しく洗って残った糠やゴミなどを落としていました。今はそんなにする必要はありません。ただ、米は最初の給水速度がものすごく早いので、1回目は大量の水で洗い、ゴミもしっかり落としてください。2回目、3回目は大量の水は必要なく、ソフトに洗います。洗いすぎると旨味が水に溶けて出てしまうので3回で十分です。

    ごはんくん

    3回でいいんですね。

    三橋さん

    その次に浸漬(しんせき)、つまり米に吸水させます。これは中心部にまで水を浸透させることが目的です。

    稲を刈り取ったときは米の水分は25%程度、それをカビたりしないように乾燥させ、15%程度にまで減らして保存しています。なので炊くときは元に戻すために中心部にまで水を浸透させます。中心部まで水を浸透させるには、冷たい水を使って室温に置いた場合、だいたい2時間程度かかります。それ以上浸漬しても、以降はほとんど変化がありません。

    ごはんくん

    ええっ、2時間も!でもそんなにのんびりできないご家庭もあるんじゃないでしょうか。

    三橋さん

    実はそこに科学があるんです。

    大抵の炊飯器には「ふつう」と「急速(早炊き)」といった炊飯モードがありますよね。何が違うかわかりますか?
    ふつうだと炊き上がりまで50分から1時間、早炊きだとだいたい30分前後。実は「ふつう」モードはこの「浸漬」と、炊けたあとの10〜15分の「蒸らし」も含めてやってくれて1時間なんです。一方の「急速」は浸漬と蒸らしをはしょって、ほとんど炊く調理のみの時間です。

    ごはんくん

    なるほど!だからふつうモードで炊くと倍くらい時間がかかるんですね。でもそれでも浸漬時間が足りないですよね?

    三橋さん

    これはちゃんとデータがあるんですが、米は水温が高いほど吸水量が多いんです。そこで炊飯器のふつうモードではIHで釜の温めをコントロールしながら水温を上げて米に水を吸わせています。だから1時間程度でおいしく炊けるんです。
    でもこれも使い分けです。もし事前に十分浸漬時間を取れるのであれば炊くだけ、つまり急速モードでも構わないわけです。逆に吸水時間があまり取れないなら、ぬるま湯を使って吸水させてから急速モードで炊くだけでもぜんぜん違います。

    ごはんくん

    何が違うのかわからずに使っていたけど、そういう理屈だったんですね。

    三橋さん

    じゃあ次の質問です。ごはんのおいしさって何だと思いますか?

    ごはんくん

    そう聞かれると言葉ではなんといえばいいか…甘みがあって、もっちりしていること?粘り気があるとおいしいです。

    三橋さん

    そう。それが日本人の好きなごはんですよね。

    科学的にいうと水分と酵素が米のデンプンに抱き込まれてうまく糊化(=α化)しているとおいしいという状態なんですが、一般の感覚では「粘り(テクスチャー)」と「甘さ」でだいたい表現できると思います。これもちゃんとデータがあって、5℃とか低い温度で吸水させると吸水速度は遅くなりますが、粘りが増します。一方、30℃程度の水で吸水させると吸水が早く、なおかつ吸水量が多くなり、糖類が増加して甘みが増します。

    ごはんくん

    でも水温は季節でも違うし、お米の状態も保存状態で違いますよね。

    三橋さん

    その通り。氷を入れればおいしく炊けると言われたりしますが、水温が低いと吸水速度は遅くなります。氷を入れるならその前に2時間は浸漬したいですね。

    また、水温が高いと吸水は早く量も多いですが、ぬるま湯程度で十分です。粘りと甘みを両方引き出そうとするとそうしたことも頭の隅に入れて準備してもらいたいです。ただ、すぐに食べてしまうならそこまで気にせず炊いても大丈夫です。

    でも一度に食べきらない量を炊くなら、ちょっとがんばって浸漬の時間を取って欲しいですね。1時間浸けるだけでも翌日のおいしさが違います。すぐに炊かない場合は浸漬したまま冷蔵庫に入れるか、ザルにあげて乾燥しないように濡れ布巾などで覆ってください。冷蔵庫の寒風は割れの原因になります。

    ごはんくん

    翌日もおいしいって大事かも。そうするとやはり時間をかけて浸漬することは大事ですね。

    炊飯の科学② 炊きあがったらすぐにほぐす!ちょっとの手間でおいしさUP

    ごはんくん

    でもごはんは毎日のように炊くもので、時間をかけて浸漬できないこともあると思います。炊飯器で炊くときにほかに何かいい工夫はありますか?

    三橋さん

    ありますよ。それは「ほぐし」をすることです。炊飯器で炊くとき、これをおろそかにするとおいしくありません。

    ごはんくん

    ほぐしとは、炊けたあとのことですか?

    三橋さん

    そうです。ほぐしは炊飯の最後の仕上げといえる作業です。炊きあがったら15分以内にご飯をさっと混ぜることで、釜内に残って遊離している水分を蒸発させ、ごはんを均質化させることができます。浸漬時間の差はわからなくても、ほぐしているかいないかで味の差を感じる人は多いという調査結果もあります。昔はかまどで炊いたものをおひつに移し替えていました。また初期の炊飯器は保温機能がなかったので、保温器に移し替えていました。両方ともそのときにごはんがほぐされていました。今は炊飯後すぐ保温に切り替わりますが、放置しないでください。

    ごはんくん

    炊きあがってそのままにしていること、ありますね。そうするとそのまま固まってしまって確かにおいしくないかも。なるべく早くほぐすことでおいしくなるんですね。

    三橋さん

    さっとほぐして一度蓋をして5分くらい待ってください。そうするとおいしくなります。ほぐさずいると元の水分量に戻ろうとして(=β化)どんどん固くなっていってしまうので、忘れずにやってください。これが最初にいった5分の手間です。それでずいぶん違うはずです。
    おいしく炊くために大事なのは浸漬とほぐし、この2点ですね。その他、知っておいて欲しいこと、気をつけたいことをいろいろ挙げてみます。

    炊飯の科学③ 無洗米は洗ったほうがおいしくなる

    三橋さん

    今は無洗米を使う人も多いですよね。無洗米は洗わなくていいと思っていると思いますが、いやいや、ちょっと待ってくださいという感じです。

    ごはんくん

    え、無洗米は洗ったほうがいいんですか?

    三橋さん

    無洗米って外側を通常の精白米よりもっと削ってある状態です。そうするとどうなっているかというと、裸の状態なので表面に傷がつきやすいんです。そしてその傷の内部に空気が入っているので、ただ水を入れただけでは気泡が水を弾いてしまい、中まで水が浸透するのにすごく時間がかかります。削ったときの粉もついている状態です。洗わないでいいというけれど、空気を抜いて水を浸透させ、また余計な粉を落とすためにはさっと洗ったほうがいいですね。

    ごはんくん

    それは盲点でした。

    三橋さん

    ほかにも、玄米を家庭用の精米機で精米されたり、コイン精米機を使う人もいますが、それも注意ですね。現代の精米工場は非常にレベルが高くて、米の状態や品種に合わせて最適な形で精米をしています。だからキズも少ないしさっと洗うだけでおいしく炊けます。でもコイン精米機なんかはその調節はできないので、削りすぎたりキズも多くついたりします。なので、個人で精米する場合は買ってきた米と同じように炊けるとは限りません。

    ごはんくん

    新米か古米など、お米の新しさも炊飯に影響する要素はあるんですか?

    三橋さん

    古米かどうかはあまり関係がないですね。昔は保存技術が低かったので、翌年の6月頃には古米になって匂いも発生しました。でも今はきちんとした業者の保管倉庫は適度な環境に保たれているので、ほとんど品質は変わりません。味の心配はそんなにしないでいいと思います。ただ、最近は米不足で産地のわからない米が多く出回っています。本来、スーパーやコンビニのバイヤーは地域に合ったお米を仕入れていたのでそんな心配はしなくてよかったんですが…。どこで採れたどんな米だかわからないものは、さきほどいった洗米や浸漬、ほぐしなんかを意識してください。

    ごはんくん

    お話を聞いて、一口に炊飯といっても、いろんな要素が絡み合っているんだなあとわかりました。

    三橋さん

    そうなんです。おいしく食べるために「これをやってください」といえればいいんですが、環境にも左右されるので単純にこれだ、いえないところがあります。なんといっても昔は「飯炊き3年」といわれるほど炊飯は大変な調理でしたから。でも今は便利な炊飯器がありますし、今日お話したような原理を知っていれば違うと思います。

    ごはんくん

    浸漬やほぐしなど、参考になるお話をたくさんありががとうございました。ぜひ今日からやってみます!

    まとめ

    ①洗米はやさしく短時間で!

    最初の一回は大量の水で。トータル3回程度でOK。洗いすぎは旨味が逃げてしまうので注意。無洗米も軽く洗うと◎。

    ②浸漬はしっかりと

    米の中心まで水を浸透させることで、ふっくらおいしいごはんに。炊飯モードは「ふつう」を選択すれば、最近の炊飯器は浸漬から蒸らしまで自動で行なってくれる。浸漬時間をしっかりとれるなら、2時間程度浸漬+早炊きモードでもOK(早炊きは浸漬と蒸らしを省いた炊飯)。時間がないときは、ぬるま湯を使って吸水させてから急速モードで炊くと◎(水温が高いと吸水速度・吸水量がともにアップするため)

    ③炊きあがり後は15分以内に“ほぐす”

    炊きあがったら15分以内にご飯をさっと混ぜることで、釜内に残って遊離している水分を蒸発させ、ごはんを均質化させることができる。さっとほぐして一度蓋をして5分ほど待つとさらにおいしさアップ!

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