あの日のごはん帖#04「まさのおばあちゃんの魔法のらっきょう」

誰の心にもある「記憶にのこる味」。
水彩画家・nawが、水彩画とともにその思い出を綴ります。
ほっと心がほどけるような、懐かしいごはんの物語をお届けします。
大人になって、ひらく味覚
小さいころは食べられなかったのに、
大人になって好きになるものがある。
生魚。
ラーメンのメンマ。
紅しょうが。
そして、そのひとつが「らっきょう」だった。
つんとした匂いと、見た目の白さに、
なんとなく距離を置いていたあの頃。
けれどある日、その印象は、
思いがけずやさしくほどけていくことになる。
まさのおばあちゃんの、手しごと
近所に住む、まさのおばあちゃん。
御年九十を超えてなお、畑に立ちつづける、野菜づくりの達人だ。
季節ごとに、立派に育った野菜を持ってきてくれる。
その中に、ときどき紛れているのが、自家製のらっきょう漬け。
土から育て、ひとつひとつ丁寧に下処理されたらっきょうは、
つやつやと光をまとって、まるで小さな宝石のようだった。
母のつくるスパイスカレーの隣に添えられたその一皿。
恐る恐る、ひとつ口に運ぶ。
その瞬間、
鼻を抜ける爽やかな香りと、さっぱりとした味わい。
そして、こきみのよい歯ざわり。
気づけば、もう一粒、と手が伸びていた。
なくてはならない味になる
それ以来、らっきょうは、
わたしにとって「好きなもの」になった。
なかでもやっぱり、
まさのおばあちゃんのらっきょうは格別だ。
味のやわらかさも、粒の大きさも、歯ざわりも。
どれをとっても、ほかとは少し違う。
きっとそこには、
長い時間と、手間と、
あの人の暮らしそのものが詰まっている。
気づけばもう、
まさのおばあちゃんのらっきょうなしでは、
少し物足りなく感じてしまうくらいになっていた。

福井県在住の水彩画家。
おいしく、たのしく、ゆるやかに水彩画を描いています。
視覚に障がいを持つ私だからこそ見える世界と色彩を、そっとおすそ分けできたらと思っています。
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