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ごはんがすすむね!日本の郷土料理│鹿児島県編

    日本には、特定の地域でしか食べられていない郷土料理が数多くあります。

    「ごはんがすすむね!日本の郷土料理」は、日本全国の「お米を使った郷土料理」や、「“ごはんのおとも”になる郷土料理」を紹介する連載企画です。

    今回フォーカスする地域は、「鹿児島県」。

    鹿児島県の料理研究家・西ひろみさんに、鹿児島県ならではの、ごはんをもりもり食べたくなる郷土料理についてお話を伺いました。

    日本各地には、私たちがまだまだ知らない料理がたくさんあります。みなさんも、どんな味か気になりませんか?

    その地域ならではの“ごはんがすすむ”郷土料理との出会いは、あなたのごはんライフをより楽しくするはず。

    明日、誰かに話したくなる郷土料理の旅へ、行ってらっしゃい!

    西 ひろみ(にし ひろみ)さん

    料理研究家

    鹿児島県徳之島生まれ、鹿児島県在住。2016年にかごしま郷土料理マイスター(かごしま郷土料理マイスター協会)を取得。運営しているホームページ「かごっまおごじょのうんまかレシピ」では、郷土料理をはじめとした様々な料理のレシピを紹介している。

    ※かごっま=鹿児島、おごじょ=女性

    鹿児島県ってどんなところ?

    西さんの故郷・徳之島の犬田布岬

    鹿児島県は面積が広く、九州地方で最も大きな県です。年間平均気温は全国2位と、暖かい気候が特徴です。

    西さん

    鹿児島県本土には薩摩半島と大隅半島があって、たくさんの離島もあります。北から南まで約600kmも距離があるんですよ。

    同じ県でも、土地によって食文化が異なるのが鹿児島県の面白いところです。私は離島の徳之島出身なので、鹿児島県の本土で普通に食べられているものを食べたことがなかった、なんて経験もあります。

    ──600kmというと、東京都から兵庫県まで移動できちゃう距離です。鹿児島県はとっても広いんですね。

    鹿児島県で食べられているお米の郷土料理&ごはんのおとも

    1.酒ずし(さけずし)

    地酒で7〜8時間ほど発酵させて作る押し寿司。酢を使わずたっぷりの地酒をご飯にかけて発酵させる。3層になっており、山の幸や海の幸、地の食材が入っている。

    西さん

    発祥は江戸時代です。もともとは上級武士の家庭で食べられていた郷土料理といわれています。家庭で出てくるというよりは、郷土料理専門のお店で食べるような料理です。

    酒ずしが生まれた説はいくつかあるんですよ。

    ひとつは、春の花見の席でお殿様が宴会をしたときに、当時女性が公の場でお酒が飲めなかったので、具材の中にお酒を染み込ませてこっそり飲んだというお話です。

    もうひとつは、薩摩藩主だった島津のお殿様が並んだ料理を全部集めて、それにお酒をかけたらおいしくなったとか。いずれにしても、食べ物にお酒をかけたらおいしくなったというところから始まっています。

    ── 食べ物を集めてお酒をかけてしまおう! というアイディアが、焼酎で有名な鹿児島県らしさがあって面白いですね。酒ずしにはどのような食材が入っていますか?

    西さん

    必ず入れなければならない食材が決まっている訳ではありませんが、春の食材を使います。家庭ごとに好みの食材を入れるんです。わたしが習ったものだと、イカと鯛とエビを入れますね。

    あと、ツワブキを入れます。ツワブキは鹿児島県に生息している植物で、黄色い花が咲くんです。その茎の部分を食べるんですよ。

    西さん

    他には、タケノコや切り干し大根を入れて……。それと、さつま揚げとかまぼこ、こが焼きも入れます。こが焼きは白身魚のすり身と卵、豆腐、砂糖を蒸した甘い卵焼きです。

    ちなみに、鹿児島県ではさつま揚げを”つけ揚げ”と呼ぶんですよ。

    ── 海の幸に山の幸、そして”つけ揚げ”も入っているとは! 具沢山ですね。

    西さん

    そうなんですよ。食材はそれぞれ味付けを変えるんです。全て別々に味を付けて、ご飯と交互に重ねていきます。

    酒ずしはおもてなしの心が詰まった料理です。たとえば、焦げた部分は使わなかったり、切れ端の部分は外したり。使わなかった食材はちらし寿司にして食べます。

    ──手間ひまをかけて作る料理なんですね。食べるとどのような味がするのでしょうか?

    西さん

    お酒の風味が口いっぱいに広がります。食感は少し水分が多い感じかな。発酵が進んでいくので、どんどん味が変わっていくんです。出来立てに食べるのと、2日目、3日目に食べるのは味が全然違います。日が経つごとに酒の香りが消えていき、甘みが増します。深みが出るという感じです。

    ──発酵具合によって味が変わるなんて、食べ終わるまで違った味を楽しめるのがおいしそうですね!

    2.さつますもじ

    「すもじ」には「ちらし寿司」という意味がある。お祝いの席や春の行楽弁当でよく食べられている。

    西さん

    鹿児島県では、お祝いの席にさつますもじが欠かせません。

    酒ずしが上流武士の料理なのに対して、さつますもじは庶民の家で親しまれてきた料理です。あまり高級なものは使わず、身近にある食材で作るのが特徴です。

    ひな祭りや入学式などの春の行事食として食べられることが多いので、タケノコや人参、椎茸など春が旬の食材が入っています。

    ── お祝いごとにはさつますもじを食べる文化があるんですね。一般的なちらし寿司とさつますもじに違いはありますか?

    西さん

    入れる具材や盛り付けはちらし寿司とよく似ていますが、さつますもじには地酒を入れます。ただ、最近は地酒を入れずに寿司酢で作る家庭も増えてきているようです。

    ──なるほど。時代の変化と一緒に、さつますもじのあり方も変わってきているのですね。

    3.豚味噌

    豚肉のミンチに砂糖と味噌を入れて炒めた料理。家庭によって、鰹節やゴマを入れることがある。

    西さん

    鹿児島県でごはんのお供といえば、豚味噌が思いつきます。

    家庭で作るというよりは、スーパーで手軽に買うことが多いです。お惣菜売り場には、必ずと言っていいほど豚味噌が置いてあります。旅行のお土産に買って帰る方もいますね。コンビニに豚味噌おにぎりが売っていたこともありますよ。

    あとは、県内の様々な農業高校でブランド品として販売されています。農業高校といえば豚味噌、なんてイメージもありますね。

    鹿児島県はサトウキビの生産が盛んなので、甘い味付けの料理が多いんです。

    ──鹿児島県では定番のお惣菜なんですね。甘い豚味噌、想像しただけでごはんが食べたくなってきます。

    豚味噌の鰹ver.「鰹味噌」もあるそうです

    西さん

    白いごはんに合うものは、焼酎にもよく合います。豚味噌は、おかずにもお酒のおつまみにもぴったりの料理なんです。

    ──確かに、ごはんに合うものはお酒にも合いますね! ここでも鹿児島県の焼酎文化を感じます。

    西さんの「郷土料理を広める活動」について

    ──西さんは普段どのような活動をされているんですか?

    西さん

    料理教室の講師をしています。料理教室では郷土料理を教える機会もありますね。あとは、テレビ番組に出演して料理コーナーを担当することもあります。

    ──なぜ郷土料理に関わる活動をされるようになったのでしょうか。

    西さん

    私には娘がいるんですけど、子どもが生まれたのがきっかけで鹿児島県の郷土料理を伝えていきたいなと思ったんです。そこで、かごしま郷土料理マイスターの講座に足を運ぶようになりました。郷土料理を絶やさないために、昔のまま引き継ぐだけではなく、必要に応じて現代風に作りやすくするのが私たちの仕事だと思って取り組んでいます。

    ──西さんが思う、鹿児島の郷土料理の魅力は何ですか?

    西さん

    鹿児島県はとても広いので、同じ県内でも土地によって色々な気候があってそれぞれの特徴を活かした郷土料理があります。それらをお互いに学び合って、広がっていくのが魅力だと思います。

    たとえば、奄美大島には「鶏飯」(けいはん)という、ごはんの上に具材をたくさん乗せて鶏ガラスープをかけて食べる郷土料理があるんです。いまは発祥の地である奄美大島以外でも、県内の空港や街のお店など様々な場所で食べられるようになりました。一部の地域で食べられているおいしいものが広がっていって、鹿児島県を代表する郷土料理になっていくのが面白いです。

    まとめ

    「酒ずし」と「さつますもじ」に共通して使われる地酒は、鹿児島県の豊かな焼酎文化を感じさせ、とても興味深かったです。特に、試しにお酒をかけてみたらおいしくなったというエピソードは、焼酎文化が根付いた土地だからこそ生まれた料理という点が面白いですね。

    また、鹿児島県といえば黒豚というイメージがあるので、「豚味噌」という定番のお惣菜があるのも納得です。豚肉の旨みがぎゅっと詰まった豚味噌はごはんとの相性が抜群で、鹿児島の人々の食卓に欠かせない存在なのだと想像できます。

    鹿児島県は非常に広大で、地域ごとに様々な郷土料理があるという点も魅力的です。紹介しきれないほどの料理があると思うと、ワクワクしますね。西さんのホームページには、鹿児島の食文化をもっと深く知りたい人にとってぴったりの情報が満載です。ぜひ、おうちで鹿児島県の郷土料理作りに挑戦してみてはいかがでしょうか。

    鹿児島県の農家・鶴秀さんがつくるお米はこちら!

    取材・執筆

    蒲田おにぎりちゃん
    https://x.com/onigirikamata
    https://www.instagram.com/onigirikamata/

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