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ものづくりは生きる力。自分の手で生み出す喜びを伝えたい

SUNAOLAB.

福岡県

SUNAOLAB.は、2009年に長尾朋貴さんが立ち上げた生活雑貨ブランド。
「MoMA」(ニューヨーク近代美術館)のデザインストアでも取り扱われた「なべしきハウス」や御祝品としても人気なベビー食器「きのこのうつわ」など、遊び心あふれる生活雑貨を生み出しています。「ものづくりの面白さを発信したい」という想いから、子ども向けのワークショップなども開催しています。

ものづくりは生きる力。自分の手で生み出す喜びを伝えたい
『SUNAOLAB.』代表・長尾朋貴さん

まるで鉛筆を削るように、自分だけの箸を作ることができる『箸作りキット PENCIL?』。名前の通り、子どもも大人も思わず「鉛筆?」と食いついてしまう商品です。

自分でものを作れるって、生きる力に直結するんです───。

そう話してくれたのは、『SUNAOLAB.』代表兼プロダクトデザイナーの長尾朋貴さん。『SUNAOLAB.』はメーカーとしてものを作り販売するだけでなく、子どもたち向けのワークショップを開催するなど、“ものづくりの面白さ”を発信しています。

ソラミドごはんでは、そんな『SUNAOLAB.』の『箸作りキット PENCIL?』をお取り扱い中。今回は『SUNAOLAB.』のはじまりや、自分の手でものを作ることの意義や喜びについて長尾さんに聞きました。

自分に素直に生きる『SUNAOLAB.』のはじまり

「いま、自分の気持ちに素直になって生きているだろうか」

社会人になり数年が経った頃、当時建築業界に勤めていた長尾さんは、自分自身に問いかけました。図面を描くことも楽しかったけれど、自分が企画から完成まですべてに携われるものづくりがしたい。その先で、人に喜んでもらえたらこんなに幸せなことはない。

そう思うようになった長尾さんは、自身のプロジェクトとして『SUNAOLAB.』を立ち上げます。

「『SUNAOLAB.』という名前は、自分自身が素直さを忘れないようにしたいという願いを込めてつけました」

小さな頃から工作が好きで、空き箱を使ってロボットや車を作っていた長尾さん。社会に出てからもう一度、会社員をつづけながら木工所で機械や道具を借りて休日にものづくりをする日々を送ります。

最初は自分が日常で使う机や椅子を作っていたところ、幼稚園を営む友人から「園児用のベンチを作ってほしい」と声がかかりました。

そこで登場したのが、『SUNAOLAB.』の1つ目の商品である『かめはめスツール』です。

名前の通り亀の形をした椅子は、亀の頭の部分がジョイントになり、椅子と椅子同士を繋げることができます。縦に積むと棚にもなる優れもの。

「試作段階ではもっと角ばった形だったんです。でも、子どものことを考えると丸いほうが安全ですよね。友人と話しながら、たくさん改良して生まれたのがこの形なんです」

“自分のため”のものづくりが、“誰かのため”のものづくりに変わった瞬間でした。

「自分のためにつくるのも楽しいんですが、やっぱり誰かに受け取ってもらえたときの喜びは段違いです。自分が生み出したものを欲しいと言ってもらえることの幸せを実感したことが、建築業界を辞め『SUNAOLAB.』を会社化した原点になっています」

鉛筆削りで箸が誕生。『箸作りキット PENCIL?』

ソラミドごはんで取り扱っているのが、『箸作りキット PENCIL?』。包み紙を開けると色のついた六角形の竹の棒が入っています。「鉛筆?」と勘違いしてしまいそうですが、実は箸なんです。

作り方はとっても簡単。まず先端を市販の鉛筆削りで削り、次にカッターナイフや小刀で全体のバランスを見ながら少しずつ削っていきます。最後に付属の紙ヤスリで形を整え、表面を滑らかに整えたら完成です。

昔ながらの鉛筆と同じ六角形は、手にフィットしやすく持ちやすい。自分の好みに合わせて先端の太さを調整したり、長さをカットすることもできます。

所要時間は20分くらいの手軽さながら、自分だけのオリジナルの箸が誕生です。

「手軽に作れて、かつ日常使いできるようなキット商品をつくりたかったんです。ちょうどその頃、僕の子どもが箸を使いはじめる年齢だったのですが、箸が上手に持てなかったんです。じゃあ、鉛筆と同じように持てる箸を作ろうと思って六角形の形を採用しました」

他社の箸づくりキットをリサーチしてみると、1.5cm角くらいの材料をひたすら削るというような、難しく、そしてアレンジが効かないものが多かったそう。

一方、『箸作りキット PENCIL?』は、どんな人でも簡単に作れるにもかかわらず、自分好みの形にできる“余白”があります。さも鉛筆を削っているそのままの風景で、箸が完成する。なんともユニークな商品です。

また、削る方向性に制限がないことから、木ではなく竹を採用。安全性への配慮から海外製ではなく、熊本の竹林から採取した国産竹を使用しています。

子どもたちは、アイデアの宝庫

長尾さんがものづくりをするにあたって大切にしているのが、「機能性」「美しさ」「仕掛け」の3つ。誰もが日常的に使える「機能性」にもっとも重きを置きつつ、ものとしての美しさ、そして遊び心あふれる「仕掛け」を入れることです。

『かめはめスツール』や『箸作りキット PENCIL?』以外にも、お家の形の中に収納できる鍋敷きや2つのお皿を重ねると「きのこ」になる器など、『SUNAOLAB.』の商品はユニークなものばかり。これらのアイデアは、街中を歩く人たちや家族など人間観察をする中で生まれてくるのだそう。中でも、子どもたちのいる家の中は長尾さんにとってアイデアの宝庫です。

「僕にとって子どもたちは一番のモニターなんです。試作品に対してやたら食いついてくることもあれば、『ふ〜ん』と、リアクションがないときもあります。僕の意図とは全然違う使い方をすることも(笑)」

試作品を子どもたちに渡して反応を見て、アイデアをブラッシュアップする。自分の子どもだけでなく、ワークショップを通じて別の子たちの様子もよく観察しているのだとか。

「箸づくりのワークショップでは、子どもによってかける時間やこだわりが全然違って、とても興味深かったです。時間をかけて集中する子もいれば、すぐに飽きてしまう子もいます。そういう生のリアクションを見て、どんな商品やどんなものづくりであれば、子どもたちの気を引けるかなあと考えることがすごく楽しいんですよね」

ものづくりは人間ならではの営みであり、生きる力

今後も自身の商品やワークショップを通じて、ものづくりの面白さを伝えていきたいという長尾さん。『箸作りキット PENCIL?』のように、お客さんが手を動かす“余白”を設計する背景には、どんな想いがあるのでしょうか。

「とあるデザイナーが言っていた言葉なのですが『道具を使って道具を作るのは人間だけ』らしいんです。

猿が枝を使って木の実を採ったり、ラッコが石で貝を割ったり、動物たちも道具を使うことはできますが、鉛筆削りや刃物という“道具”を使って、さらに箸という“道具”を作り出すことができるのは人間だけなんです。

そういった人間特有の営みを取り戻すきっかけをつくっていけたらいいなと、最近は考えているんですよね」

箸を生み出すことができれば、その箸の先端が例え折れてしまう日が来たとしても、「また削って使えばいいか」と次のものづくりのアイデアにつながるかもしれない。そんな期待をこめて『箸作りキット PENCIL?』は生まれました。

長尾さんはもう一つ、あるエピソードを話してくれました。それは、とあるイベントでの出来事。商品の売れ行きがあまり良くなかったとき、知り合いの職人がその場にあった端材から耳かきを作り売りはじめました。巧みな手つきにお客さんも足を止め、いくつか売れていったそうです。

「その耳かきのおかげで、今日の食費を賄えるくらいにはお金が入るわけですよね。自分でものを作れるって、生きる力に直結するんだなあと衝撃を受けたんです。何かものを生み出す力があれば、その場の工夫次第で生きていくことができます。子どもたちにもそういったたくましさを身につけてもらいたいです」

ものづくりは人間特有の営みであり、生きる力にもなる──。

最初から難しいものを作ろうとすると心が折れてしまうかもしれませんが、『箸作りキット PENCIL?』であれば、どんな方でも完成させられるし、きっと達成感も感じられることでしょう。そして、その成功体験が次のアイデアにつながり、その人にとってものづくりが身近な営みになる。

小さなお箸キットには、これだけの大きな未来への期待が込められていました。

取材・執筆:佐藤伶
編集:貝津美里
写真:SUNAOLAB.(提供)