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自然と共に生きる米作りで、日本の食を支えたい

コモリファーム

福岡県鞍手郡

塩を用いた農法とは、水にといた塩水を散布するもので、もちろんお米にしょっぱさは残りません。お米のおいしさを決める大きな要素である「ミネラル分」を多く含むという理由で、​​​​天日干しの活きた塩、ミネラル還元塩が使われています。さらに塩が持つ「忌避効果」にも期待。殺菌作用を持つ塩は、虫が好まない環境を作ることも可能です。他にも、コモリファームでは、「紙マルチ」を使用するなど、自然に配慮した農法でお米作りが行われています。

自然と共に生きる米作りで、日本の食を支えたい
『コモリファーム 』生産者・古森憲さん

『小さな竹美人』は、有機JAS認証を取得済み。お客様に「安心・安全・おいしい」お米を届けたいと、手間を惜しまずお米作りをしています。甘味と粘りのバランスがよく、お米そのものの、ほっこりとしたおいしさを充分に楽しむことができます。

生産者は農業法人『コモリファーム』代表・古森憲さんです。約15年前に故郷である小竹町にUターンし、お父様から受け継いだ「塩」を用いた農法で、食味を追求したお米づくりに汗を流しています。今回は古森さんに、ソラミドごはんでもお取り扱い中の『小さな竹美人』の栽培におけるこだわりや、故郷で農業に携わる想いについてお話を伺いました。

プログラマーから米農家へ。両親が守ってきた米作りを継ぐ決意

『コモリファーム』は、祖父の代から続く米農家。古森さんは幼い頃から田植えや稲刈りなど、両親が行う農作業を当たり前のように手伝っていたと言います。就職をきっかけに、身近だった田んぼを離れて上京。都会のビルに囲まれプログラマーとして働きながら、身も心も満身創痍で多忙な日々を送っていたと当時を振り返ります。

「関東で仕事をしていた頃はとても忙しく、休みの日は疲れて1日中寝ているだけ。そんな生活が続き、体調を崩して離職せざるを得なくなりました。一旦、実家に戻って療養。その後は、プログラマーとして鹿児島で再就職をすることに。鹿児島は暮らしやすいところでしたが、私は長男ですし将来のことも考えない。将来のことも含め、自分の身の振り方を考えていました」

そして30歳を目前にし、人生の転機を迎えます。

「両親の米作りをする背中を見て、米農家になることを決めました。両親はすでに無農薬で化学肥料を使わない、『塩』を用いた安心安全な農法に取り組んでいて。お米作りに真摯に向き合う姿勢に、胸を打たれました。そしてそのお米を食べたお客様が、とても喜んでくださっている。『コモリファーム』に広がる人の笑顔、幸せな食の風景に、感動しましたね。『両親のお米づくりを引き継ぎたい、親の代でこの農法を終わらせてはいけない』と強く思いました」

そうしてプログラマーから米農家へ転身した古森さん。安心・安全・おいしいお米をお客様に届けるために、両親から引き継いだ「塩を用いた米作り」に力を注いでいます。

「塩は、お米のおいしさを決める大きな要素である『ミネラル分』を多く含むという理由で散布しているんです。使用するのは、天日干しの活きた塩・ミネラル還元塩。苗を植える前に直接そのまま散布しますが、もちろんお米にしょっぱさは残りません」

さらに塩には「忌避効果」も期待されています。無農薬、無化学肥料でお米作りをするには、虫による被害は避けて通れません。ですが殺菌作用を持つ塩を使うことで、虫が寄らなくなる。殺すのではなく、虫が好まない環境を作る。その他にも古森さんが手間暇かけて作るお米には、自然と共生するための工夫がありました。

「稲に虫がつかないように、苗植えの間隔を大きくする『疎植』も行っています。そうすることで田んぼの風通しが良くなり、虫が住みにくくなります。また稲を密にせず育てることで一つひとつが大きく丈夫に成長し、結果的に食味をよくすることができます。おいしいお米を育てるには、環境を整えることも重要です」

また虫の発生を限りなく抑えるために、「紙マルチ」を使用して雑草が生えにくい環境もつくっているといいます。

※紙マルチ:田植えの際に、苗と一緒に敷くシートのことで、雑草の発生を防ぐ効果を期待するもの。微生物により分解される素材で作られており、約50日ほどでなくなる。環境にもやさしい。

「この紙マルチは素材が軽いため、水田の水嵩に大きく影響を受けます。水が多いと浮いてしまい、水が少ないと土に張り付いてしまうというもの。田植えの際には細心の注意が必要ですが、それでもお米作りによい環境を整えるため、水の管理を行いながら、丁寧に作業を行っています」

「それでも自然相手なので草が生えることもあります。どうしようもないときには、両親、妻、それから3人の子どもたちも一緒に、家族7人で草取りをするんです」

朗らかに笑う古森さん。家族総出の作業にもかかわらず、楽しそうに話してくれました。

「できる限り自然の環境に近く、自然に還元できる農法で米作りがしたい。無農薬、化学肥料不使用を選択することは、虫や雑草の対策にかなりの労力を伴いますが、知恵と工夫で対応しています。それでも完璧に虫よけや除草はできません。ある程度は、“お裾分け”だと思っていますね。あくまで『自然の中で完結する農業』を目指しています」

古森さんのその言葉は、自然の恩恵を受け、自然との共存を前提とした、人の営みの本来あるべき姿を表しているのなのかもしれません。

自然のサイクルの中で生きる農家の生活。明け方の星の美しさ

今では毎日太陽を浴びながら、イキイキと農業に励む古森さん。就農をきっかけに、ご自身にも大きな変化があったと言います。

「都会で働いていたときは、いつも頭がぼーっとしていたり、身体がだるかったり、慢性的に体調不良でした。でも就農してからは思考がクリアになり、心も身体も軽い。ここでは日の出とともに農作業に取りかかり、日が沈めば作業を終える生活です。ほぼ丸1日、太陽に照らされながら身体を動かしているので程よい疲労感もあり、就寝時間もおのずと早くなります。自然のサイクルの中で生きているので、会社員の頃と比べて生活リズムは安定しましたね」

汗水垂らして身体を動かす。自然を堪能する働き方が自分には合っていた、と嬉しそうに話してくれました。

「農業をするようになって、明け方に星を見るようになりました。それまでは星は夜空でしか見たことがなかったんですが、明け方の澄み切った空に光る星は、本当に美しいんです。そんな経験ができる今のこの生活に、とても満足しています」

日本人の胃袋を支え、次世代へつなげる。お米作りへの覚悟

農業を引き継ぎ、自ら作ったお米を食べ、健康を取り戻した古森さん。お米の消費量が年々減少していく状況で、これからは一人でも多くの方にお米のよさを知ってほしい、そのよさを広めたいと話します。

「ここ最近、フードロスなど食の問題がクローズアップされていますが、自分たちが当たり前に口にしている食べ物のことを考え直す時期に来ているんだと思います。まずは日本国内の自給率を上げることが大切。生きる上での根幹である『食』を考えるとき、子どもたちや孫たちの世代が飢えないような土台をつくり、環境を整えないといけません。

そのためには、農業に対する理解も必要です。農作業はきついですし、天候や災害の影響を受け不安定だともいえます。しかも補償も少ない。その上、農家自体が減ってきている状況です」

厳しい状況に置かれている日本の米農家の現状も、知ってほしい。そう切なる想いを打ち明けてくれた古森さん。と同時に、米農家としての覚悟も語ってくれました。

「これから先、どんな社会になっても、食糧危機が訪れたとしても、日本人の胃袋を支え満たしていくことが農家の使命だと思っています。農作物の安心安全は当たり前。もちろんそうですが、そこには農家一人ひとりの努力があってこそ。だからこそ、消費者のみなさんにも、“農家に対する理解・食への興味関心”を深めていただけたら嬉しいです。安心安全な『食』を、次の世代の子どもたちに引き継ぐためにも」

本当にごはんがおいしいと、味噌汁とお漬物だけでごちそうになる

さまざまな想いを胸に、自らが育てるお米に誇りを持っている古森さん。おいしいお米は、それがあるだけで「ごちそう」になると教えてくれました。

「おかずが、お味噌汁やお漬物だけといったシンプルなものでも、お米がおいしいと充分に満足できるんです。白ごはんとおかずだけでごちそうになるし、贅沢品だと感じます。中でもわかりやすいのが、ごはんにお茶をかけただけのお茶漬け。これが本当においしい。わが家の子どもたちが大好きな食べ方です。それを見ると、『やっぱり、お米がいいんだな』と思いますね」

お米の甘味と、噛むほどに増していく旨味があるお米だからこそ、究極にシンプルな食べ方で満足ができる。大人よりも味覚が敏感だといわれる子どもたちの反応は、コモリファームのお米のおいしさを象徴しているものだと感じます。

そのお米には、お客様からも嬉しいコメントが寄せられています。

「他の無農薬のお米と比べても、美味しさが際立っています」

「子どもの食べる量が増えました」

「いつもおいしいお米をありがとう」

これらの言葉は、日々の励みにつながっていると話してくれました。

「一番大切なのは、安全でおいしいお米を作っていくことです。

それを安心して食べていただく。農業は天候にも大きく左右されますので、安定してお客様にお米を届けることも容易ではありません。

だからこそ『去年より、今年のお米の方がおいしい』そう言っていただけると、とても励みになります。

全国に数あるおいしいお米の中から、コモリファームのお米を選んでくれるお客様の想いに応えたい。その一心で、これからも米作りに励んでいきます」

日々汗を流しながら、自分の手でお米作りをすることで、身をもって農業の可能性を感じている古森さん。自然と共存した安心・安全・おいしさにこだわった農法で、日本の「食」を支えます。今を自分らしく生き、未来を笑顔で語る姿が、とても印象的でした。

執筆:福島和加子
編集:貝津美里
写真:コモリファーム提供