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太陽の恵み、水の恵み、大地の恵みに感謝

ドリーム・ファーム

富山県入善町

「これでいい」ではなく、「これがいい」と思われる安心安全なもの作りを続けるために、「常に愛情を込めて農業と向き合うこと」を何より大切にしています。一つひとつの作業に手を抜かず、自然の恵みに感謝をしながら、愛情を込めてお米を作っています。

自然の恵みへの感謝とともに、入善町で農業を担っていく『有限会社ドリーム・ファーム』生産者・青木孝弘さん

「太陽の恵み、水の恵み、大地の恵みに感謝」。

この想いとともに歩み続け、現在100ヘクタールにも及ぶ広大な圃場でお米をはじめ、季節の野菜やチューリップを栽培している『有限会社ドリームファーム』。富山県北東部に位置する入善町(にゅうぜんまち)で、地域における農業の担い手として活動しています。

入善町は、背後に北アルプス立山連峰を拝し、そこから日本海へと注ぐ黒部川により肥沃な黒部川扇状地が形成されています。さらに、立山の地中から湧き出すミネラル豊富な伏流水や、昼夜の寒暖差が大きい気候などが「恵み」となり、古くからお米作りが盛んです。

中でも最も生産量が多いのが、粘りと甘みが特徴の『コシヒカリ』。そして、コシヒカリのDNAを受け継ぎつつあっさりとした味わいの、富山県のブランド米『富富富(ふふふ)』。現在、ソラミドごはんでもお取り扱い中のお米です。

今回、これらの生産者であり、『有限会社ドリームファーム』の代表・青木孝弘さんに、会社設立の経緯や、お米作りへのこだわりや想いなどをお聞きしました。

農業衰退を目の当たりにし、決意した地域農業の担い手

『ドリーム・ファーム』がお米作りを始めたのは、2002年。兼業農家だった青木さんが、勤めていた農協で営農指導員として農作物の栽培を指導していた頃に遡ります。

「当時は、米作りの主流だった『兼業農家』が衰退し始めた頃です。会社勤めをしながら農業を続けることが難しくなる方が増えて、担い手が次第にいなくなっていきました。高齢化もどんどん進んで、この辺りには大きな農地がいくつもあったのに、維持することができない農家が増えてきたんです」

周囲を見渡すと、数年後にはお米作りが途絶えてしまう農地がいくつも。このままでは、長年受け継いできたこの町の農業が一気に廃れてしまう。

そんな危機感を持っていた青木さんは、ある人から声を掛けられます。それが『ドリーム・ファーム』の初代代表でもある鍋嶋太郎さん。同じ入善町で20ヘクタールほど作付けを行なっていた鍋嶋さんも、この町の農業衰退を危惧していました。

「この状況をどうにかしないといけない、その想いで、鍋嶋さんご家族と私で『ドリーム・ファーム』を立ち上げました。目的はもちろん、入善町の農地の受け皿になることと、農業の担い手として活動すること。そうしたら次第に圃場が集まり始めて、2〜3年後には雇用を開始するまでになりました。今では100ヘクタールにまで広がっています」

広大な圃場で栽培されているのは、お米だけではありません。100ヘクタールの内、出荷するお米の農地は70ヘクタール程。その他の圃場では、飼料米や季節の野菜、チューリップなどを育て、1年を通して常に何かしらの収穫があるような状況です。そこには、鍋嶋さんの経営に対する信念がありました。

「会社の柱をお米だけに絞るのではなく、野菜の栽培や花の栽培という柱を2つ3つと作ることで、いざというときに事業の揺らぎをお互いにカバーできる持続可能な体制を作っていければと思っています」

「これがいい」と思われるお米作りを目指す

圃場が広がっていくと同時に関わる人も徐々に増え、現在従業員は14名に。兼業農家だった方や、定年後に農業に関わり始めた方など、バックグラウンドは違えど農業に対する共通の信念を持ちながら日々活動しています。

その信念とは、消費者から「これでいい」ではなく、「これがいい」と思われる安心安全なもの作りを続けること。それを実現するために、「作り手が常に愛情を込めて農業と向き合うこと」を何より大切にしていると言います。

「お米作りは、苗を植えて収穫するだけではありません。土作り、水管理、病害虫や雑草の防除など数多くの作業があって、そういう一つひとつの要素に手を抜かないことが大事。周囲から見られたときに、恥ずかしくないものを作っていこうよ、とみんなで話しています」

その根底には、「太陽の恵み、水の恵み、大地の恵みに感謝」という想いがあります。

そもそも、入善町は自然の恵みに支えられお米作りが盛んな地域。中でも特筆すべきなのが「水」です。立山連峰の豊かな雪解け水を湛える「くろよん」こと黒部ダムからの水は田んぼを潤し、また地中深くに染み込んだミネラルをたっぷり含んだ伏流水は、あちこちから湧き出ています。そして、その水の冷たさが水温や気温に大きな寒暖差をもたらし、おいしいお米を育てる大きな要素になっています。

「8月の上旬に出穂してからが特に大事な時期なんです。稲穂は、入善町の暑い夏の日中、光合成をしてデンプン質を蓄える。そこに朝晩、冷たい水を入れることによって寒暖差ができて、甘味と旨味の強いお米に育ってくれる。よくよく考えると、これって人と同じなんです。昼も夜も暑さが続いたらダラっと疲れますが、涼しくなるとシャキッと元気になるでしょ。だから、おいしいお米が作れるのは、立山連峰から流れる水のおかげでなんです」

自然の恵みである「水」に感謝することは、「土作り」へのこだわりにも反映されています。

地元の畜産農家と連携し、「有機肥料」である堆肥を秋・冬に散布して耕し、さらに年を跨いで春にも再度しっかりと耕す。そうすることによって、害虫の発生や病気にも強く、ふくよかな土を作ることができます。そして、立山連峰からの恵みの水がそこへ注がれることによって、唯一無二の土壌に。

豊かな水を湛えるためには、まずは土作りから。そうして「太陽の恵み、水の恵み、大地の恵み」全てが、一粒のお米に凝縮されていきます。

さらに、おいしくて安心で安全なお米を育てるため、徹底した品質管理にもこだわります。収穫したお米を色彩選別機に2回通すことで、もみ殻付玄米や黒米、着色したお米を取り除きます。また一年中おいしいお米をお届けするために欠かせない鮮度・品質・風味を保つため、玄米のまま低温倉庫で保管しています。

「農業は自然の中で行うものなので、恵みへ感謝する気持ちは、『ドリーム・ファーム』立ち上げ時からずっと持ち続けています。その上で、自分たちができることを最大限手を抜かずに、愛情を込めて続けていけば、必ず結果が現れてくると思うんです」

奮起できたのは、創業時の決意とお客様の励ましがあったから

ただ、自然の中でお米を育てていくということは、同時に自然の猛威を受け止めるということでもあります。これまで、ご苦労はなかったのでしょうか?

「一番怖いのは秋の台風です。春の田植えから始まって、秋にようやく刈入れというときに、台風に直撃されると稲が倒れてしまう。そこに長雨が重なると収穫時期が遅れて、さらに品質が悪くなってしまいます。これまでに何度も痛い目に遭いましたよ」

穏やかな表情で話す青木さんですが、その度に、『ドリーム・ファーム』を立ち上げたときの決意を思い出し、奮起したそうです。

「お米作りに魅力を感じているからというのもあるんですが、やっぱり一番は、創業のきっかけになった『地域の中で農業の担い手にならないといけない』という決意です。この入善町の農地と農業を守っていくという使命感のようなものかもしれませんね。誰かがやらないといけない、やり続けないといけないんです。だから、うまくいかなかったからといって、簡単に『辞めます』とは言えません」

一方、農業を続ける上で、大きな励みになっていることもあるのだとか。

『ドリーム・ファーム』では、定期的に東京などに出向き、お米を販売する機会を設けています。直接消費者と顔を合わせ、お米の良さを知ってもらった上で、購入してもらうというものです。

「『この前、買って食べたらすごくおいしかったので、また買いに来ました』と言って足を運んでくださるお客様が何人もいるんです。中にはわざわざ『今年も新米を楽しみにしています』とハガキを送ってくださる方も。それから、お子さんやお孫さん世帯にもうちのお米を紹介してくださって、3世代に渡ってお米を食べてくれているお客様もいます。そういう声はやっぱり嬉しいですよ。ありがたいですし、来年もまた頑張ろうという励みになります」

自分たちが育てたお米を、どんな人がどんな想いで食べてくれているのかを知れたことで、従業員のお米作りへの関わり方もより深くなったとか。より積極的に、より真摯に、お米作りの工程や作業について、自らの意見を青木さんに伝えるようになったそうです。

地域に親しまれ、信頼される「ドリーム・ファーム」であり続けたい

「農業の担い手を増やす」という想いは、地域の小学生〜高校生の子どもたちに農業を体験してもらうという取り組みにも繋がっています。自ら育て収穫したお米や野菜を家に持ち帰り、家族で「おいしいね」と言いながらいただく。

「もちろん、農業体験が楽しかったという子もいれば、きつかったという子もいます。その中に一人でも、将来、農業に関わることを選択する子がいれば嬉しい。そんな想い続けています。まずは、子どもたちの生活の一部に農業があるということを知ってもらう。そして農業に親しんでもらう。そのことを大切にしたいなと」

ただ、同時に歯止めのかからない担い手不足、それによる耕作放棄地の増加は深刻です。

「ここ入善町でも、山間部ほど、耕作放棄地が増えていっている状況です。山間部はそもそも圃場が狭く大きい機械が入りにくいので、お米作りが大変なんです。その上、担い手がいないとなると高齢化が進んで、最終的には農業ができなくなって放棄地が増えてしまう。

実はそうなると、自然災害も起きやすくなるんです。田んぼがあったことで、大雨が降っても、そこがダムの役目を果たして水が留まっていたのに、それができないことで、水が堰き止められず大災害に繋がってしまう。しかも、一度放棄された田んぼは、草が生え、木が育って、元に戻そうと思っても途方もない年月が掛かるんです」

『ドリーム・ファーム』は扇状地にあるため、山間部の現場とは幾分違う状況ですが、まず目指すのは、自分たちの圃場の周りに耕作放棄地を作らないこと。これまでと同様、可能な限り地域の農地を引き継いでいく、という想いに変わりはありません。

地域の農業の担い手としての大きな使命を持ちつつも、青木さんの言葉からはお米作りに対する深い愛情と、入善町の農業を育んできた自然への尊敬の念を感じます。

「安心安全でおいしいお米をお届けするためには、私たちが今できることを精一杯やるだけです。その中で、地域の皆さんに親しまれ、信頼されるような『ドリーム・ファーム』であり続けたいですね」

取材/執筆:福島和加子
編集:貝津美里
写真:有限会社ドリーム・ファーム提供